「2008年、1月15日。 午後16時30分」-沢村の求職活動あの頃随想、ラスト-
これがKさんか。
初対面のKさんは、求職サイト上でその写真を見た通りの、美人だった。
芝公園に来るのは初めてだった。
年明けの1月の重く冷たい空気は、面接会場のビルに入るまでは、まるで凍てつくように俺には感じられていた。
芝公園にあるそのIT企業の面接を何故受けたのかは覚えていない。
たまたま使っていた求職サイトで募集がされていたが、勤務地が俺が当時住んでいた埼玉の蓮田からは遠すぎた(会社があった芝公園も)為に、一度自分から応募する会社からは落としていたのだった。
が、どういうわけか俺のメールボックスに人事担当者のKさんの名義で、面接の調整の連絡メールが来ていたので(不思議な縁を感じていたこともあって)、俺は面接の練習にでもなればいいや、という軽い気持ちで俺は、その日の面接に望んでいたのだった。
いや、正直に告白すれば、求職サイト上で見たKさんの容姿が美人に見えたので、今回の求職活動の記念に面接を受ければ、(生でKさんに)逢えるかもという思いもあったかも知れないと、正直に言っておこう。
軽く筆記試験があり、そのあと同じくその日の応募者だった男2人と俺と男3人で人事担当のKさんとの集団面接を受けた。
それまでに既に十数社の面接を受けていた俺にとっては別にどうということもなく、俺はKさんとの会話を実に楽しんでいたように思う。
面接の最後、ちらっと俺に対してKさんが微笑んでくれたのだが、その笑顔が、実に鮮やかに脳裏に残った。
面接を終えて外に出ると、既に日もくれかけており、その会社からは新年の「2008」のイルミネーションで飾られた東京タワーが見えた。
ふと携帯に着信が入っていたことに気付き、留守電の録音を聞き返す。
「株式会社○○の○○と申しますが先日は当社の面接を受けて頂きましてありがとうございました。 選考の結果採用とさせて頂きたく、御連絡させて…」
来た来た。 待ちに待っていたものがついに…
求職活動50日を経て、初めての採用内定の連絡である。
遠くに見える東京タワーの「2008」の文字に希望が膨らんでゆく思いを感じながら、俺は初めて来た芝公園を後にしたのだった。
それから、5社ほどの採用内定の連絡を俺は一気に受けた。(※何故かこうした吉報と凶報とは、来る時は重なって一気に来るものである)
この日受けたKさんの会社からも、実はこの面接の翌日に、Kさんの声で携帯に採用内定の留守電を貰った。
が、もう1社気に入っていた会社(※それが今俺が勤務している会社である^^)があった俺は、結果としてKさんからのその内定を、蹴った。
が、もし今いる会社から内定を貰っていなかったら、俺は間違い無く、迷わずこの日受けたKさんと同じ会社に入社していただろう。
それから3ヵ月後、俺が今いる会社での本社研修が終り、俺が配属されることになった勤務地は何と…芝公園だった。
「勤務地は、芝公園」と聞かされた時に、真っ先に俺の頭に浮かんだのは、別会社の人間であり、俺の会社とは何の関係も無いはずのKさんの顔だったこと、またその瞬間、
「あ、これでまたKさんと(芝で)逢える…?」
という想いを何故か抱いてしまったことを、今だから正直に告白しよう。
追伸:
4月に芝公園に赴任して8ヶ月以上が経った。
Kさんとはその後、逢っていない。
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